今年はステージ上の楽器構成の発想をガラッと転換してみました。今まではミルには主にドラムやパーカッションの役割を負ってもらい、そこにサックス、キーボード、ギター、ベースなどの楽器を演奏するミュージシャンが加わるという方向でした。ミルはその構造上2小節から最大で8小節のループしか演奏できませんので、どうしてもリズムが単調になってしまう。既存の「バンド」という枠で考えてしまうとドラム的な部分が「物足りない」「不足」という印象を拭えませんでした。そこで今年は発想をガラッと転換してパーカッション奏者を2人ゲストに招き、ミルと一緒に三位一体のリズムを演奏するという方向を試みました。これが大成功で、ミルのループの上に人間2人が有機的に絡み、複雑なうねりを持ったグルーブが生み出され、今までになかった新たな方向性・可能性を見出すことができました。
今年新たにミル(カラクリ演奏装置)に取り付けた楽器や機構も多数ありました。そのうちの一つが『フェイジング・ミル(phasing mill)』です。これも従来のミルの「単調さ」を脱するために考えたものです。現代音楽作曲家のスティーブ・ライヒにインスパイアされて"phasing"という手法を用いました。歯数の異なる2つの歯車を噛み合わせ、回転するごとに音符がずれていくという理屈です。まだまだ音符の精度を高める工夫が必要ですが手法そのものは成功し、ここにも新しい可能性を見出しました。
従来の大きな『種まきミル』に加え、可搬性を高めた小さいサイズの『旅人ミル』も新たにステージに登場。小さいながらも、スネア・ハイハット・カウベル・カホン・シロフォンと一通りの楽器を備えるもので、この先いろんな場所に移動して演奏するのに役に立ってくれそうです。
楽器以外にも「パラパラマンガ装置」が新たに登場し、地元東山町のイラストレーター戸田さちえさんの描いたネコやポヨポヨ浮遊体がアニメーションとなってステージに視覚的な動きを添えてくれました。
今年から新たな企画としてスタートさせた「農機具ミュージック」のコーナーは、唐箕から紙吹雪が舞い音を鳴らすところから始まり、ゲストの打楽器奏者によるギーコン(足踏み脱穀機)を楽器として演奏する場面では大きな拍手がわき起こりました。この一風変わった企画もまずは第一歩を踏み出すことができたと思います。
一関市の「地域おこし事業」としてスタートしたこの音楽祭、今年も昨年同様補助金をいただかずにチケット収入と協賛金のみを資金とする完全自主採算事業として開催することができました。地域の皆様のご協力を結集した事業として独り立ちして続けていける方向性が見えたように思います。
自然の水流で水車を回し音楽を奏でるという他に例を見ないユニークな試みは年々注目を集め、今年も近隣はもとより東京や遠く九州・四国からもご来場いただきました。毎年楽しみに来てくださるリピーターの方も増えました。
ご来場いただいた皆様、ご協力・ご協賛いただいた皆様、心より御礼申し上げます。
日時:2019年9月1日(日)11:00開場 12:00開演
会場:飛ヶ森キャンプ場(岩手県一関市千厩町奥玉字飛ケ森11-80)
出演:takaTAKAα/ツジヤマガク
音楽水車スペシャル・バンド/岡 淳(sax,flute) 山本祐介(marinba,vib,perc) 岡部洋一(perk)
主催:とびがもり水車音楽祭実行委員会 共催:音楽水車プロジェクト
協力:奥玉振興協議会・飛ヶ森キャンプ場をきれいにする会・Taku。
後援:一関市・岩手日報・岩手日日新聞社・ICN一関ケーブルネットワーク・一関コミュニティーFM(FMアスモ)
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